トラックのDPFとは?故障の原因や対処法などを詳しく解説!
トラックの走行中に「DPFのインジケータランプ」が点滅した経験はないでしょうか。
DPFはトラックのディーゼルエンジンに対する排ガス規制が始まったころから導入された装置で、異常を示すインジケータランプが点滅すると多くはマフラーの異常が出ているサインです。
DPFが故障すると、エンジンが切れなくなったり燃費が悪化したりする恐れがあり、すみやかな対処が必要です。
今回はトラックのDPFについて、故障する原因やその対処法などを解説します。
トラックのDPFとは
トラックに装備されているDPFとは排ガス浄化装置のことで、ローマ字表記の「Diesel particulate filter(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)」の略称です。
また「ディーゼル微粒子捕集フィルター」ともいわれています。
トラックに多く使われるディーゼルエンジンから出る排気ガスには「煤(すす)」などの有害な微粒子物質が含まれており、マフラーから黒煙になって排出されることがあります。
DPFはこの有害な微粒子物質をフィルターに集めてマフラーから大気中に排出しないようにする装置です。
そのまま使い続けるとフィルターが目詰まりするため、DPFが走行中に微粒子物質をヒーターなどで燃焼除去し自動再生をしてくれます。
このDPFは自動車メーカーによって名称が変わります。
▼自動車メーカー別 DPFの名称
自動車メーカー | DPFの名称 |
三菱ふそうトラック・バス | DPF (ディーゼルパティキュレートフィルター) |
日野自動車 | DPR (ディーゼルパティキュレートアクティブリダクションシステム) |
いすゞ自動車 | DPD (ディーゼルパティキュレートディフューザー) |
UDトラックス | UDPC (ユーディーパティキュレートクリーニング) |
このように自動車メーカーで名称は変わりますが、一般的に総称してDPFといわれることが多いです。
DPFのフィルターの目詰まりは微粒子物質の煤(すす)だけではなく、エンジンオイルに含まれる「灰」も原因の1つです。
そのため、DPFが装備されているトラックに使うエンジンオイルは灰の含有量の規制やそもそも灰を出さないエンジンオイルも販売されています。
ちなみに、DPFに使われるフィルターは熱に強いセラミックが使われることが多いですが、最近ではコスト削減のためにステンレス製のものも使われています。
トラックのDPFが故障した際に生じるサイン
では、もしトラックが走行中にDPFが何らかの異常が起きるとどうなるのでしょうか。
最初に気付くのは、DPFの異常を表すインジケータランプが点滅することです。このようなDPFのインジケータランプはフィルターの集塵機能が落ち、自動洗浄が出来なくなることで点滅します。
自動洗浄機能が働かなくなると、排ガスの浄化が出来なくなるので、マフラーから黒煙が排出されるなどの現象が起きます。
したがって、DPFのインジケータランプが点滅したら、すみやかにトラックを停めて手動で再生作業をする必要があります。
DPFのインジケータランプが点滅した時の手動再生作業の手順は
- トラックを安全な場所に停める
- アクセルを踏み、アイドリングを高回転で実施する
- 「DPF再生ボタン」とランプを押す
の順番でおこなってください。
インジケータランプが点滅の状態では、その後約50kmほどなら走行が可能です。しかし、なるべく早めに手動再生作業をおこなうようにしましょう。
走行できるからといってそのままにしているとインジケータランプが点滅から点灯に変わります。
点滅から点灯に変わってしまうと、手動での再生作業は出来なくなり、速度も時速40~50kmぐらいしか出せなくなります。そうなると整備工場で修理するしか方法がありません。
一般道なら急に速度が落ちてもさほど問題はないですが、高速道路を走行中だと急激な速度低下は大きな事故につながる恐れもあるので注意が必要です。
トラックのDPFが故障する原因
トラックのDPFの故障はおもに下記の3つが原因の場合が多いです。
待機時間が多い
貨物用トラックの場合、荷積みや荷下ろし場所で長時間待機することが多いです。待機時間が長いとアイドリング時間も長くなるため、マフラーに微粒子物質や煤(すす)が溜まりやすくなります。
そのため、フィルターの目詰まりが起きやすくなり、故障しやすくなります。
交通量の多い道路ばかり走っている
慢性的な渋滞が発生する道路を毎日のように走行していると、止まったり走ったりの繰り返しでなかなかエンジンの回転数が上がることはありません。
エンジンの回転数が上がらないとDPFフィルターの自動再生が出来なくなるため、故障の原因になりやすいです。
走行距離の少ないトラック
車庫から仕事先や納品先までの距離が短いときは走行距離が少ないために排気ガスの温度が十分に上がりきらず、DPFの自動再生が出来ずに故障することがあります。
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メーカー別|トラックのDPFが故障した際の対処法
万が一、トラックのDPFが故障してしまった時の対処法は自動車メーカーによって違います。
ここでは自動車メーカー別の対処法について解説します。
日野
日野自動車ではDPFのことをDPR(ディーゼルパティキュレートアクティブリダクションシステム)といいます。仕組みは基本的にDPFと同じです。
DPRが何らかの異常が発生するとDPRのインジケータランプが点滅します。点滅してから走行出来るのは約150kmです。その距離以内に手動再生や整備工場で見てもらうようにしましょう。
▼日野自動車製トラックのDPR対処方法
- DPRインジケータランプが点滅したらすみやかに安全な場所へ停める(走行150km以内)。
- DPRの浄化スイッチを押して手動再生を試みる。
- DPRとDPF再生中のインジケータランプが消えるまでそのまま待機する(約15分~20分)。
- 手動再生が出来ない時には整備工場へ連絡して対応してもらう。
トヨタ
日野自動車と同じDPRという名称で採用されています。
トヨタではダイナという1トンや2トンクラスのトラックを出していますが、中型車や大型車と違い、DPRのインジケータランプが点滅してからの走行距離は短く、約50kmです。
したがって、一般的なトラックよりも早めの対処が必要です。
▼トヨタ製トラックのDPR対処方法
- DPRインジケータランプが点滅したらすみやかに安全な場所へ停める(走行50km以内)。
- パーキングブレーキをかけた後、シフトレバーを「N(ニュートラル)」にする。
- DPR再生スイッチを入れ手動再生を試みる。
- インジケータランプが点滅から点灯になり、エンジン回転数が上昇。手動再生が開始。
(再生完了まで約15分から長い時で40分ほどかかります。) - インジケータランプが消えてエンジン回転数が正常値になれば走行可能。
- 手動再生が出来ない時には整備工場へ連絡して対応してもらう。
いすゞ
いすゞではDPFのことをDPD(ディーゼルパティキュレートディフューザー)の名称で採用してます。
「DPDスイッチを押してください」の表示が点滅し同時に警告音が鳴ります。そのまま走行していると点滅が早くなります。具体的に何キロまで走行していいという基準がないので、インジケータランプが点滅したら安全な場所にトラックを停車し、すみやかに対処しましょう。
▼いすゞのトラックのDPR対処方法
- パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N(ニュートラル)」に入れる。
- エンジンをアイドリング状態にする。
- PTOを装備している車両はPTOの操作をしないでください。
- DPDスイッチを押すとエンジン回転数が自動的に上がり、再生が始まります。再生時間はおおよそ15分~20分程度。その後手動再生スイッチが消えたら走行が可能です。
- 手動再生が難しい場合は、迷わず整備工場へ連絡しましょう。
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三菱ふそう
三菱ふそうトラック・バスではDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の名称で採用されています。
インジケータランプが点滅したら、50km走行もしくはおおむね1時間以内に手動再生をする必要があります。
▼三菱ふそうトラックのDPR対処方法
- インジケータランプが点滅したら、安全な場所にトラックを停車。
- パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N(ニュートラル)」に入れる。
- インジケータランプが点滅から点灯に変わるまでDPFスイッチを押す(約2秒)。
- エンジン回転数が上昇し、再生が開始。15分~20分ほどで再生が完了する。
- 手動再生が難しい場合は、迷わず整備工場へ連絡しましょう。
日産
三菱ふそうトラック・バスと同じDPFの名称で採用。
▼日産のトラックのDPR対処方法
- インジケータランプが点滅したら、安全な場所にトラックを停車。
- パーキングブレーキをかけ、シフトレバーを「N(ニュートラル)」に入れる。
- DPF手動再生スイッチを押すとインジケータランプが点滅から点灯。エンジン回転が上がるとともに手動再生が始まる。
- 30分~40分ほどで手動再生が完了し、インジケータランプが消灯する。
マツダ
DPFの名称で採用。
他のメーカーよりもインジケータランプが点滅してからの走行距離が短く、約30km以内の対処が必要です。
さらに、DPFの手動操作は10秒以内におこなう必要があります。
▼マツダのトラックのDPR対処方法
- インジケータランプが点滅したら、安全な場所にトラックを停車。
- パーキングブレーキをかけたらシフトレバーを「N(ニュートラル)」にする。
- DPFスイッチを長押し(1~2秒)。その後スイッチから指を離す。
- 1~2秒待ったのち、再度DPFスイッチを3秒以上押す。
- エンジン回転数が上昇したら、PM(粒子状物質)の除去が始まったらスイッチから手を離す。
- 手動再生時間は約10分で完了。
- DPFのインジケータランプが消灯したら走行可能。
トラックのDPFの修理費用目安
トラックのDPFはインジケータランプが点滅したらすみやかに手動再生する必要がありますが、インジケータランプが点灯してしまうと手動再生が出来なくなってしまいます。
DPFのインジケータランプが点灯すると時速30~40kmほどしかスピードが出なくなり、マフラーからは黒煙が噴出、そのままでは車検も通りません。
手動再生が出来なくなると整備工場で修理することになるので、余計な費用がかかってしまいます。しかもDPFの修理費用は高額になる場合が多いです。
▼トラックのDPF修理費用目安
車両クラス | DPF修理費用目安 |
小型車(積載1~2トン) | DPF部品代(約40万円)+工賃 |
中型車(積載4トン) | DPF部品代(約60万円)+工賃 |
大型車(積載10トン以上) | DPF部品代(約100万円)+工賃 |
トラックのDPF部品は高額で、上記金額にさらに工賃が加わると思わぬ出費にびっくりするドライバーも多いでしょう。
DPFの部品交換は手がかかるため、修理も2~3日かかることが多く、仕事にも影響が出てしまいます。
そうならないためにも、DPFのインジケータランプが点滅したらなるべく早く手動再生をするようにしましょう。
車種によってはDPFの堆積量を示すインジケータがあるトラックもあります。DPF堆積量インジケータの値が低いうちに手動再生をすることで、DPFの故障を防ぐことが出来ます。
まとめ
トラックのDPFは排ガス規制により、ディーゼル車のマフラーから出る黒煙を排出させないようにする装置です。
走行中や信号待ちで停車中に作動することもあり厄介な装置ではありますが、マメに手動再生をすることで、そのような事態を防ぐことが出来ます。
DPFが故障してしまうと高額な修理費用が発生します。DPFの手動再生は早めにおこなうようにしましょう。
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